今回、メジャーリーグ挑戦の強い希望を封印し、プロ野球の北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)に入団を決めたドラフト1位の大谷君。日ハムは大谷君を
説得し、大谷君は日ハムの入団を
決意したのである。その中身について検討してみたい。
大谷君の米国メジャーリーグへの憧れは、その並外れた
素質にある。彼の素質は高校野球界群を抜いている。投手として直球の球速が
160キロ(高校生新記録)をマークした。さらに
地方大会敗退にも関わらず、世代別の世界大会で”
全日本の4番打者”を務めた。
選手層の厚い高校野球界では殆ど考えられないことである。高校球界TOPにして、さらなる自己の成長を目標にしたら、その成長の可能性をメジャーリーグに求めたのは理解出来るところ。恐らく、ダルビッシュ投手(日ハム➡テキサスレンジャース)の「日本野球は技術優先で、それだけでは通用しない」なる言動も大いに影響しているのではないかと思う。でも、ダルビッシュは己の思いだけで成長した訳ではなかった。日本球界が
育てた一流
選手であった。今回、それも明白となったと思う。
まず、今回、日ハムがどんな
ロジックで彼を説得して行ったのかをみてみる。日ハムは、彼を説得する為に
25ページに及ぶ資料(厳密にはもっと多い)を作成して交渉に臨んだ。語弊があるかもしれないが、プロとしては未知数の一高校生相手に、一人前の人間として対応する
真摯な姿勢だけでも敬服するところである。
- 夢の確認
- 日韓のメジャー挑戦の実態
- 日本スポーツ選手の競技別海外進出傾向
- 日本選手が世界で戦う為の手法
- この資料作成に協力した人物紹介
夢の確認では大谷君がどうなりたいかを確認する
- 「米国でやりたい訳ではなく、成長したいのだよね」
- メジャーは、淘汰の仕組み
- 成長し成功するなら底上げする仕組みの日本球界の環境が良い
実態では、メジャーリーグで通用している日韓の選手の特色を説明。
- 韓国では”高卒チャレンジ”は珍しいことではない
- 韓国高卒投手では過去20年実績なし、成功者は野手のみ
- MLB選手までに登り詰めた日本プロ野球(以下、NPB)経験者=69%、日韓プロ実績なし=6%
- MLBでの選手寿命についても言及し、NPB経験者が圧倒的に長い事を証明
傾向では、野球選手のみに限らず、広く日本人アスリートにフォーカスし、種目別に活動拠点を海外に移す必要性を証明している
- 野球、柔道、サッカー、女子バレー、テニス、水泳、フィギアスケートなどをポジショニングし各分野の世界レベルを定義
- 活動拠点別を、国内、若年層から海外、選手として確立後海外、に分類
- 競技環境の違い…日本が発展途上の分野と、TOPレベルにある分野では、明確な違いがある
手法では、日本人の身体能力について言及しながら、日本人アスリートの理想的な
成長プロセスを定義
人物紹介では、
各分野の日本TOPレベルの指導者の協力を得て作成されたことを紹介
以上である。
同様の
説明手順は、どこの分野でも
応用出来る。そして、人から『
深い理解』と『
満足の行く納得』そして『
決意』を導きだせると感じた。そして、提案することへの
真摯な姿勢も忘れてはならない最も
重要なことである。
これを公開に踏み切った日ハム球団には、深く敬意を表したい。今回の日ハムの功績は、日本プロ野球全体の課題であった、新人獲得分野でのメジャーリーグとの競合を、当面は食い止めることになるし、プロ野球のみならず、日本野球界全体の衰退を一時的にではあるが抑止したと思う。但し、日本野球界が発展するかは別の問題であると感じる。
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資料
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説明 せつ‐めい【説明】〘名〙(スル)ある事柄が、よくわかるように述べること。
説得 せっ‐とく【説得】〘名〙(スル)よく話して、相手に納得させること。
納得 なっ‐とく【納得】〘名〙(スル)他人の考えや行動などを十分に理解して得心すること。
理解 り‐かい【理解】〘名〙(スル)1物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。
決意 けつ‐い【決意】〘名〙(スル)自分の意志をはっきりと決めること。また、その意志。決心。
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