人が動くとき(野球界の事例)

2012.12.16
今回、メジャーリーグ挑戦の強い希望を封印し、プロ野球の北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)に入団を決めたドラフト1位の大谷君。日ハムは大谷君を説得し、大谷君は日ハムの入団を決意したのである。その中身について検討してみたい。 大谷君の米国メジャーリーグへの憧れは、その並外れた素質にある。彼の素質は高校野球界群を抜いている。投手として直球の球速が160キロ(高校生新記録)をマークした。さらに地方大会敗退にも関わらず、世代別の世界大会で”全日本の4番打者”を務めた。選手層の厚い高校野球界では殆ど考えられないことである。高校球界TOPにして、さらなる自己の成長を目標にしたら、その成長の可能性をメジャーリーグに求めたのは理解出来るところ。恐らく、ダルビッシュ投手(日ハム➡テキサスレンジャース)の「日本野球は技術優先で、それだけでは通用しない」なる言動も大いに影響しているのではないかと思う。でも、ダルビッシュは己の思いだけで成長した訳ではなかった。日本球界が育てた一流選手であった。今回、それも明白となったと思う。 まず、今回、日ハムがどんなロジックで彼を説得して行ったのかをみてみる。日ハムは、彼を説得する為に25ページに及ぶ資料(厳密にはもっと多い)を作成して交渉に臨んだ。語弊があるかもしれないが、プロとしては未知数の一高校生相手に、一人前の人間として対応する真摯な姿勢だけでも敬服するところである。
  1. 夢の確認
  2. 日韓のメジャー挑戦の実態
  3. 日本スポーツ選手の競技別海外進出傾向
  4. 日本選手が世界で戦う為の手法
  5. この資料作成に協力した人物紹介
確認では大谷君がどうなりたいかを確認する
  • 「米国でやりたい訳ではなく、成長したいのだよね」
  • メジャーは、淘汰の仕組み
  • 成長し成功するなら底上げする仕組みの日本球界の環境が良い
実態では、メジャーリーグで通用している日韓の選手の特色を説明。
  • 韓国では”高卒チャレンジ”は珍しいことではない
  • 韓国高卒投手では過去20年実績なし、成功者は野手のみ
  • MLB選手までに登り詰めた日本プロ野球(以下、NPB)経験者=69%、日韓プロ実績なし=6%
  • MLBでの選手寿命についても言及し、NPB経験者が圧倒的に長い事を証明
傾向では、野球選手のみに限らず、広く日本人アスリートにフォーカスし、種目別に活動拠点を海外に移す必要性を証明している
  • 野球、柔道、サッカー、女子バレー、テニス、水泳、フィギアスケートなどをポジショニングし各分野の世界レベルを定義
  • 活動拠点別を、国内、若年層から海外、選手として確立後海外、に分類
  • 競技環境の違い…日本が発展途上の分野と、TOPレベルにある分野では、明確な違いがある
手法では、日本人の身体能力について言及しながら、日本人アスリートの理想的な成長プロセスを定義 人物紹介では、各分野の日本TOPレベルの指導者の協力を得て作成されたことを紹介 以上である。 同様の説明手順は、どこの分野でも応用出来る。そして、人から『深い理解』と『満足の行く納得』そして『決意』を導きだせると感じた。そして、提案することへの真摯な姿勢も忘れてはならない最も重要なことである。 これを公開に踏み切った日ハム球団には、深く敬意を表したい。今回の日ハムの功績は、日本プロ野球全体の課題であった、新人獲得分野でのメジャーリーグとの競合を、当面は食い止めることになるし、プロ野球のみならず、日本野球界全体の衰退を一時的にではあるが抑止したと思う。但し、日本野球界が発展するかは別の問題であると感じる。

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資料

北海道日本ハムファイターズ公式HP

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説明 せつ‐めい【説明】〘名〙(スル)ある事柄が、よくわかるように述べること。

説得 せっ‐とく【説得】〘名〙(スル)よく話して、相手に納得させること。

納得 なっ‐とく【納得】〘名〙(スル)他人の考えや行動などを十分に理解して得心すること。

理解 り‐かい【理解】〘名〙(スル)1物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。

決意 けつ‐い【決意】〘名〙(スル)自分の意志をはっきりと決めること。また、その意志。決心。

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