技術的な解決策として、Plan-Do-Checkと5W1Hを用いて、Action(行動)やDue Date(期限)などを一覧表にする方法がある。その一覧表で管理職は、行程管理を行って目標達成に導く方法である。私は会社員時代から、一貫して、この方法で仕事に取り組んで来ている。独立間もない頃、チーム・ラボ株式会社の青木取締役と一緒に仕事をした際、彼がこの整理法を「ブレインノート」と名づけてくれた。
私は、イレギュラーな対応は極力避けたいので、予め、幾つかのシナリオを作り、来るべき脅威への準備をしたいと思っている。イレギュラー対応まで盛り込んだシナリオが、私にとって最良の仕事の進め方、いや、最良の人生の送り方であって、常に潜在する脅威へいち早く気付くために、対策が完璧になる様、「ブレインノート」にも、その類いの記載は欠かさない。「ブレインノート」は、理屈では、『目標に向けて、無駄なく、無理なく、ムラなく、継続的する』を十分に満たしてくれた。
だが、その「ブレインノート」に記載されたプランも、所詮、人がやることである。担当になった仕事が苦手分野であったり、性格的にも不向きがあったりして、上記のPlan-Do-Check+5W1Hだけでは、片付かなくなってしまう。むしろ「ブレインノート」だけでは片手落ちなのである。歯車が狂い始めると、期限に間に合わなくなったり、チーム全体のモチベーション低下に繋がった。
どうして、上手く行かないのか・・・。色々と検討した末の結論は、設計図(ブレインノート)が、組織メンバーの個々能力を無視して作っていることが分かった。期限、コスト遵守のなか、ミッションの列挙を最優先に据えていたのである。個人のスキルや性格を考慮した設計図は、当初の設計図とは趣が違うはずである。各ミッションで、スタッフのあるべき像までも定義してしまっていたりもした。例えると「プロジェクトリーダーは、・・・・あるべき。」と担当者の理想像までも決めていた。私に限らず、一般的に起業家が陥りやすいミスではないだろうか?これにより、担当者は、理想像を追う余計な時間と労力を強いられ、その結果、本来のミッションが疎かになり、関係者とのコミュニケーションも減り、組織は分断され、本来、持ち合わせている個人のパフォーマンスすらも発揮できない状況になった。組織力なんて、とても言える状況でなかあった。大手企業なら、人材が豊富でなんとかなるかも知れないが、中小だと、正に絵に描いた餅であった。
『組織のメンバー(人数)以上のパフォーマンスを発揮する』既述の反省から、スタッフのスキル、性格上の得手・不得手を考慮し、役職には固執せず、適材適所に配置をするようになった。この人事を前提に「ブレインノート」を作成する。人ありきで作った計画は機能した。役職抜きでと申し上げたが、Plan-Do-CheckのCheckは、チームのリーダーが担い続けた方が良いと感じる。その理由は、責任の所在が誰にあるのかを明確にする為である。リーダーはPとCで何もしなくても良い訳ではなく、PlanとDoにおいても、必要であれば、その役割を担う。ただ、Checkする立場上、PlanとDoには、関わらない方が良いとは思う。
『組織力の最大化』では、組織のメンバーが相互に補完する関係が成立することで、理想的な力を発揮する。例えば、私の足りない部分を、そこが得意な人材にカバーにして欲しいし、そんな人材がどうしても必要である。私は私の得意分野を活かし、他のメンバーの不足した箇所を補う。これぞ組織が組織たる所以。組織力が、個人力を上回らなくては組織である意味がない。その様に考えると、経済学者デヴィッド・リカードが提唱した概念の比較優位に近くなっている。よく、「組織は足し算ではなく掛け算だ」と比喩されるが、この比較優位を用いれば、簡単に証明されるので試してみて欲しい。- メンバー全員に求めること
- 己を知っている(スキル:得手不得手、個性:長短所)
- 仲間を知っている(スキル:得手不得手、個性:長短所)
- 己の武器(得意分野)を磨く
- 己の苦手分野は自ら容認。急がず、徐々に改善に取り組む
- プロジェクトリーダーに求めること
- 進捗管理、期限管理を含め(C)はリーダーが責任を取る
- 個人スキルや個性を活かした役割分担(P、D)
- 業務遂行上の相互補完を心がける
- メンバーが相互に理解する場を積極的に作る