emergency mail

2012.12.07
当社には、emergency mail(エマージェンシーメール)という緊急事態発生時の「報告」「相談」「対策を検討、決定する」ツールがある。一般的な企業では「悪い知らせは早く上席に報告しなさい」と教える。それを、当社が理想とするコミュニケーションで実現させるための具体策である。 口頭伝達のデメリットは、全ての関係者に対し、一斉に情報提供するのは、到底不可能である。一斉に・・・。でないにしても、口頭では、かなりの時間を要する。伝達すべき内容も、時間経過とともに状況が変化する。結局、報告を受けた側でも、情報が錯綜し、事実関係の確認作業が発生しても不思議ではない。情報の錯綜は、現場も窓口業務に必要以上に手を割くことになり、とても合理的とは言い難い状況である。また、一堂に会するにも、関係者が現場付近にいるとは限らない。集まるにも時間がかかる。更に、指示する側が、口頭で伝えた指示が、伝言ゲームの様な伝わり方になってしまうと、ますます現場は混乱する。 これを解決する為のツールとして、エマージェンシーメールがある。当社は、事前に全関係者を同報配信先としてセットしておき、緊急事態に、現場は、メールアドレス一つだけを宛先にセットし、送信するだけで、全関係者が同じタイミングで、同じ内容で、状況把握が可能になる。お分かりだと思うが、エマージェンシーメールは、グループメールを使っている。送信先は、会社のPCのみならず、会社が貸与している携帯メールアドレス、更には、役職に応じてだが、プライベート携帯メールアドレスも登録している。受信した関係者の中で、指揮可能な最上席が現場指揮を担当することになる。現場を指揮する者は、全関係者と頻繁にメールでやり取りしながら、情報の共有と問題解決の情報収集を行なう。そうすることで、早期解決が可能となる。・・・理屈ではこんな感じである。 しかし、当初、運用は全くと言って良いほど、機能しなかった。現在でも、機能しているかと言うと、まぁまぁ機能して来ている程度ではないかと。 なぜ、機能しないのか?現場から上がってくる理由は次の通り。
  1. 報告・相談すべき事態なのかどうか判断できない。
  2. 自分たちで収束できると思った。
  3. 解決に奔走して報告することが後回しになった。
  4. 文書作成に時間がかかるから後回しにした。
  5. 上席に怒鳴られることが嫌だ。
1〜4は、緊急事態発生時に何故エマージェンシーメールを使うのか、目的を顧みず、情報共有のタイミングを逸して、原因究明や問題解決は、現場の人間のみに委ねられ、その結果、2次エラーが発生し、解決に手間取り、最悪の事態を。。と、負のスパイラルに陥れてしまうような理由である。この現状に、私は、従業員の基本的なビジネススキルの不足、または、スキルに相当なバラツキがあると考えた。この解決策として、社外のビジネススキルアップセミナーを全従業員に受講してもらっている。セミナー受講の目的は、全従業員が仕事を進める上で、同程度の価値観が共有でき、判断基準もある一定のレベルまで向上(底上げ)して、報告することの重要性を認識し、素早く行動に移してもらうためである。これは、本来なら、社内教育でやるべきであるが、当社のリソースが不足していること、プロの専門講師がプロセス等を体系化して、漏れなく基本を教えてくれること、コスト、効率(普及度、浸透度)においても、委託した方がメリットがあると考えた。 4の補足。文書作成に時間がかかっても、文書作成のメリットはある。文書作成の行為は相手に伝わるように考え、論理的になるように情報を整理する。一方、会話だと、考えることは、文章を書くときより、緩慢になる。メモをしているのなら、別であるが、所謂、リハーサルなしのアドリブでどうにかしようとしているのと同じだ。メモを取っているくらいなら、恐らくメールを出していると思う。文書作成は面倒な作業なのかも知れないが、あえて、そこに時間を割くことが、解決への近道なのだ。例えるなら、新しい仕事に取りかかる前に、一度、机の上を片付けた方が、仕事は格段にはかどる。と言う話に似ている。文書作成は、頭の中の整理(片付け)が出来るからである。具体的に言うと、報告の基本形である5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、どうした。なぜそうなった)かを、整理することで、既にある情報と、不足している情報が分かる。情報が不足しているなら、情報収集が仕事になる。情報が十分であれば、対策を講じる動きに移れる。更にメリットはまだある。気の短い上司の矢継ぎ早の質問に遮られることなく、余すことなく、現状を伝えられるのだ。一方、これを受け取った上席は、文書を読みながら、状況を想像し、冷静に対策を検討する時間的な余裕も出来る。 5は、従業員が言ったことではない。なんとなく、そんな雰囲気があるのだろうと、こちらで勝手に推測した。何故、上司は怒鳴るのか?怒鳴る側の立場を理解できれば、解決も容易である。まず、エマージェンシーメールを使うルールがあるにも関わらず、である。その他、原因を捉え損ねて対策案が間違っているとか、質問に対する回答が的第一報を電話など口頭で行う→ここで1アウト。緊急事態にこそ、運用ルールは遵守すべきである。次に、5W1Hが整理できておらず、状況を簡潔明瞭に説明出来ない→2アウト。更に、口頭の報告にも関わらず、緊急事態発生からかなりの時間が経過してしまっている→3アウト(チェンジ)である。的を得ないはなしなどが重なれば、そうなる可能性は高くなる。と、思う。しかし、百歩譲って、状況を的確に報告出来れば、例え、第一報が口頭であっても、1アウトだけで済むので、そうはならずに済む。しかしながら、第一報は、やはり、エマージェンシーメールを運用してもらいたい。口頭伝達のメリットはあまりにも少ない。 その他、責任者が育っていないことも、理想とする運用が出来ない原因の一つだと感じている。この解決策は、私が現場から離れ、権限を委譲することで、責任者が独り立ちをしてくれるのを待っている。現在は、報告、相談することの重要性について、企業TOPとしての経験を重ねることで、理解を深めて来ていると感じている。ここでの権限委譲の意味は、万が一の際、責任者になった者が責任を取ると言うことである。 エマージェンシーメールは、報告する側、報告を受ける側、双方に大変便利なツールであり、メリットも多い。是非とも、完璧な運用をして行きたい仕組みである。当たり前の話であるが、理由=原因ではない。だから、運用が上手く機能しないことは、現状では原因究明には至っていないことになる。取引先の為にも、末端の顧客の為にも、エマージェンシーメールの運用改善には、今後も、当事者として、真摯に向き合うことが大切であると思っている。